THE BEATNIKS COMEDY SHOW / ザ・ビートニクス コメディーショー

★BEATNIKS☆COMEDY SHOW
■公演日:2004年12月6日『月』
■開演:7:00PM ■開場:6:30PM
■会場: 野方区民ホール
■席種・料金:全席自由・前売り1500円/当日1800円
■チケットぴあ:発売中
Pコード:358-013
電話予約:0570-02-9999
Pコード電話予約:0570-02-9966

[劇作・脚本][演出]柳田光司

[出演]アル北郷/北京ゲンジ・無法松/トオル/中川

劇作、脚本、演出/柳田光司 ザ・ビートニクス コメディーショー#1 2004年12月6日(月) 野方区民ホールザ・ビートニクス コメディーショー#1 2004年12月6日(月) 野方区民ホール
 『おかしな関係』
「テレビ朝日・・あの懐かしの名番組が奇跡の大復活!」
しかし・・私の記憶が正しければ・・・(すごいなぁ・・この身勝手なフレーズ)
{クイズ・タイムショック21}は数年前、
生島ヒロシ氏が3ヶ月(1クール)だけやっていたはず。

なのに・・・その事実は完全に封印されてしまっているらしい。
何事もなかったように行けシャシャと社運をかけてやっている様を見ると・・・
ちょっと恐ろしい。
きっと生島氏も一度や二度、あのCMをどこかで見ている事だろう。
テレ朝と生島氏との「おかしな関係」である。
 
エディー・マーフィーの隠れた作品にも同じタイトルの映画が
あったように記憶する。細かなストーリーは忘れたが、主演の2人
が最後の最後まで直接からむ事なく微妙な伏線で関係していたのが
ボクの中では今も新鮮に残っている。まさしく「おかしな関係」。

当時、高校生だったボクはこの脚本にしびれた。
(とはいうものの、あれから1度も見てはいないが・・・)
そして生意気にもこうも思った。
「世界には、なかなかやる脚本家がおるやないか・・・」と。
 
丁度この頃、ボクは何の因果か?タレント☆森脇健児氏と対面している。
 
KBS京都ラジオの公開スタジオ。
番組収録が終わりスタジオブースから出てきた森脇氏。
当時すでに、嘉門達夫氏に見出されていた彼は別格扱い。
(未来を期待された超高校生級としてVIPな野郎であったのだ。)
だが、悲しいかな、ボクを含む一般リスナーはブース外。

そんな、生意気な彼が開口一番。
「この中で、高校生の柳田君っておるか!?」とかなり鼻息が荒い。
確か?嘉門氏のセカンドシングル「あったら恐いセレナーデ」という曲が発売直前、ラジオのみでオンエアーされたのを、ボクが勝手に第2弾の歌詞を書いたハガキだったと思う。
しかし、何もこんな所で公表しなくても・・・。

「このハガキ自分が書いたん?」
「えぇ・・・ボクです。」(かなりの小声)
 
狭いスタジオブース外に張り詰めた空気が流れる。
 
すると、当時高3であった森脇健児が
「ようできたハガキネタやなぁ・・・自分センスあるなぁ・・・」と。
そして・・すかさず「学校どこなん?」。
 
「・・・東山です」。
 
「ガシなんや・・・」「・・・ガシにもこんな奴、おんねんや・・・」
「みうらじゅんさん以来やなぁ・・・」と。
 
正直言えば・・・同じお笑い好きに何言われるか?焦った。
でも、この頃の高校1年と3年の差はあまりにも大きかった。
ましてや人見知りがもっとも激しい頃の話である。
何ひとつ返す言葉が出なかった。
今思えば、相手はあんなに優しく気を使ってくれたのに・・・。

この後、番組のスポンサーであった三条木屋町のお好み焼き屋へ。
確か「文衛門」という屋号。モダン焼きが美味い店。
2つ年上の彼は、嘉門さんから景山民夫の新刊【普通の生活】を
手渡されていた。「森脇!これ勉強なるから読んどけ!」。
「くそぉ〜〜何が超高校生級の森脇健児じゃ〜!
 高卒直後に春からテレビのレギュラー!?知るか!ボケッ!
間違っても、俺はお前の笑いなどでクスッとした覚えすらないぞ!」。
悔しいから、真似して同じ本を自分で買った。
何物でもない自分。評価されぬ自分。相手にもされぬ自分。
そんな僕の蒼い時代の気持ちを、いつも和らげてくれたのが、
この短編小説集の中の一編「ボトムライン」だった。
何度この物語の主人公に励まされたことか・・・。
同じ理由や全く同じシチュエーションで何度喧嘩になったことか・・・。

そしてあれから16年の歳月が。
ボクは34歳の森脇健児と会う事となった。
場所は大阪・ミナミの焼肉屋さん。
向こうのマネージャーからの接待だった。
正直ボクは逢う事が億劫だった。
しかし誰も知らない「おかしな関係」を説明するのも気が引ける。

なんという腰の引き具合。
本日限りでこの何十年にも渡りボクを苦しめた「おかしな関係」に終止符を打ってやる!勿論、前日は短編の名作「ボトムライン」を読みやる気マンマン。
でなければ・・・ボクの大切なボトムラインが消えてしまう。
ものすごい小さな個人的な「青春のやり残し」を敢行せねば・・・。
大袈裟でもなんでもなく・・・走馬灯のコマ割り。ヒットマンの心境。

仲居さんの丁寧なあつかいを受け個室に通される。
どうやら、森脇氏は先に到着しているらしい。
嫌が応でも胸が高まる。
 
敷居の障子が開けられる。
 
反射的に弱気になり目を反らす。
 
ぐっと、気持ちを持ち直すよう大脳に呼びかける。
 
ボクの目に飛び込んできたのは、真っ青なボクシング・グラブ。
ひさしの長いキャップ帽。
タンクトップから鍛え上げた腕で焼肉(なぜか鶏肉)を裏返す森脇健児。
なんという情けない長い長いネタふり。

なのに・・・森脇健児は、屈託のないニタッとした笑顔で、
「ちわ!はじめまして!」
「それにしてもうまいなぁ。やっぱ、ジムの後の生ビールは最高やで!」と、
サウナのCMにもってこいの屈託のない健ちゃんスマイル。
生意気な若さはとっくに消え去り、100%えぇオッさんって感じ。
ボクの16年間もの「心のひっかかり」は一体何だったのか?
違う意味で腹が立ってきた。

(この男は16年前の俺との出会いを全く憶えてはいない。
それどころか・・・目の前の焼肉の焼け具合にしか心は動いてはいない。)

(やばい・・・!!焼肉を食うために、のこのこ、ここ迄来た訳ではない。
こちらから話を切り出さなければ・・・!!
いい年齢こいて・・・人見知りなどと言ってはいられない!)
 
しかし、いつもの調子が全くでない。
体が硬いというか、口元が重い。
およそ30分もの間、本題に一切加われない。
かなり焦る。そんな自分にイラつく。悪循環。
容赦ない鉄板の焼け音。あの時と同じ。
トラウマ。モダン焼きのお好み焼き屋。箸すら前に出ない。
 
(仕事の話や番組企画。そんなものだったら、いくらだって
 バンバン出してやる!でも、今はそんな事は問題じゃない!)
 
本当はそれが一番の問題なのに。
何かがひっかかる。思考回路が全く正常に作動しない。
エンジントラブルというよりかなりのクラッシュ・アウト。
でも、スゴイ勢いでエンジンは空回り。
 このまま・・「おかしな関係」などと笑ってられない。
 16年の年月。現在、高校1年の子が生まれた頃の話。
 中にはSEXした奴もおるかも知れない・・・。

その瞬間・・・。
 
「ボク、ずいぶん昔、森脇さんとお会いした事あるんですよ」。
 
「いつ・・・?」ピタリと森脇健児の箸が止まる。
多分森脇氏の中ではハードスケジュールでの仕事の
中の一つであると思ったのであろう・・・。当然である。
余程、ボクが思いつめた表情と口調で言ったのだと思う。
健ちゃんの表情が一気に曇る。
サウナのCM失格。性格俳優。俳優座。

「こんな人といつ?」というより、
「俺・・・コイツに何か悪い事したっけ?」という固まった表情。
美人局にひっかかったオッさんの顔。(実際見た事はないが・・・)。
 
こうなれば・・・一気に行く。
(そんな大層な話ではないが、ボクにとってはものすごくデかい。)
 
「かなり昔になりますが、KBSの「となりの芝生」(タイトル名)で・・・」
もう、これだけで任務完了という思い。なんという引っ込み思案。
 
「あぁ〜あぁ〜あぁ〜、あった!あった!達ちゃんの・・・」と森脇健児。
そしてすかさず「高校どこなん?」。
全く同じ人間から16年前と全く同じタイミングで全く同じ内容の質問。
 
「東山です」。
 
「ガシなんや・・・」
「そうか〜〜ガシかぁ。ガシで放送作家かぁ・・・」。
 
こうして、全くの赤の他人である京都の高校生であった我々は
ひょんな事から「おかしな関係」のエンディングを迎えた。
と、同時にこの一期一会の出会いは、
ボクにとって16年ぶりに再びクランクインされた
「おかしな関係パート2」の始まりでもある。
結末は、いつ?どんな形で来るのかわからない。
ただ、ボクも森脇氏もよくぞまぁ〜〜飽きもせず小さな思いを
持続させてきたもんだなぁと思う。
何か今だに、とても不思議な感慨深さを受けているのはボクだけなのだろう。
他にない「おかしな商売」である。 


今回のこのライブも、北郷という男と水道橋博士宅で再会した事がそもそもの縁。
初めて会った時、北郷はかなり警戒していた。
だが、その時間も束の間、当時の博士宅の一室からゲラゲラと聞こえる笑い声。
どうやら、自分で自分のネタを書きながら、そのネタ設定がおかしくてたまらないらしい。「大丈夫ですか?博士、あんな奴を出入りさせて!」確かそんな会話だった。
あとは、高村薫の「レディージョーカー」が無雑作に転がっていた記憶だけ。

そして、昨年(2003年夏)この笑い声の主がついに姿を現した。
居候の身にも関わらず、トランクスとTシャツ姿でリビングを闊歩。
挙句、赤いマルボロを吸ったかと思うと、冷蔵庫から缶ビールを勝手に取り出しては半分呑んではまた新しい缶ビールを開ける・・・
しかも、トランクスの隙間から「汚らしい金玉」をはみ出させながら・・・
博士のカミさんと堂々と会話をしている・・・注意散漫な男だった。
何ひとつ進歩しない所か、明らかに人間として後退していた。
だが、一つだけ大きく気に入った。
こんな、どうしょうもなさそうな男でも・・・奇跡的にも「ボトムライン」が残っていた。
芸人としては、なんら「去勢されないまま」生きのびていた・・・・・。
しかも、その去勢されずじまいの「笑いのポコチン」はかなりの堅さであった。
これまた・・「おかしな関係」である。


THE BEATNIKS COMEDY SHOW / ザ・ビートニクス コメディーショー